夕方5時からの映画批評(レビュー)

映画館や自宅で観た映画の感想をぷりぷり更新していきます。

【ハクソー・リッジ】人を殺す戦場で、自分の信念を貫いた1人の男の実話。

2/8(金)公開の『ファースト・マン』を観に行こうとしたけれど、メガネを忘れて泣く泣く帰宅しました、ガクシコです。

 

いやーまいったまいった。朝起きてから仕事帰りに映画館に行く気ムンムンだったので意気消沈ですよ。

 

最後家を出る前に「財布よし!メガネよし!定期よし!」と持ち物確認した上で忘れてますからね。確認だけして置いていった。病気ださすがに。最近二階に行く理由もよー忘れるし。

 

とまあ前置きはこれくらいにしてですね、家に帰った私はいつも通りご飯をもぐもぐしながら携帯片手にNetflixで映画を物色しておりまして。晩御飯はシウマイでした。美味しかったです。

 

Netflixに出てくる自分にオススメの映画を見ていた時に出会ったのが、今回ご紹介する映画『ハクソー・リッジ』です。

アカデミー賞にもノミネート、受賞を果たしている作品なのでタイトル名を聞いたことある人も多いかと。

 

今作は戦争映画になっています。もちろん、作中にグロテスクな描写がありますので、感想も必然的にそこに触れる内容になってきます。苦手な方もいらっしゃるかと思いますので、耐性のない方はここでお引き取り頂き、僕の次回の記事をソワソワしながらお待ちください(笑)

 

これは、ある1人の信念を持った男の『実話』の物語です。

 

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【作品概要】

原題:HACKSAW RIDGE

製作年度:2016年

上映時間:139分

監督:メル・ギブソン

脚本:アンドリュー・ナイト

        ロバート・シェンカン

音楽:ルパート・グレッグソン=ウィリアムズ

出演:アンドリュー・ガーフィールド

        サム・ワーシントン

        テリーサ・パーマー

        ヴィンス・ボーン

        ヒューゴ・ウィービング

 

 

↑予告編

 

 

 

【あらすじ】

ヴァージニア州の田舎町で育ったデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)の父トム(ヒューゴ・ウィーヴィング)は第1次世界大戦出征時に心に傷を負い、酒におぼれて母バーサ(レイチェル・グリフィス)との喧嘩が絶えなかった。そんな両親を見て育ち「汝、殺すことなかれ」との教えを大切にしてきたデズモンドは、第2次大戦が激化する中、衛生兵であれば自分も国に尽くせると、父の反対や恋人ドロシー(テリーサ・パーマー)の涙を押し切り陸軍に志願する。グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)の部隊に配属され、上官のハウエル軍曹(ヴィンス・ヴォーン)から厳しい訓練を受けるデズモンド。生涯武器には触らないと固く心に誓っている彼は、上官や仲間の兵士たちから責められても頑なに銃をとらなかった。ついに命令拒否として軍法会議にかけられても貫き通した彼の主張は、思わぬ助け舟により認められる。1945年5月、グローヴァー大尉に率いられ、第77師団のデズモンドとスミティ(ルーク・ブレイシー)ら兵士たちは沖縄のハクソー・リッジに到着。そこは150mの断崖がそびえ立つ激戦地だった。倒れていく兵士たちに応急処置を施し、肩に担いで降り注ぐ銃弾の中をひるむことなく走り抜けるデズモンドの姿に、感嘆の目が向けられるように。しかし丸腰の彼に、さらなる過酷な戦いが待ち受けていた。

Movie Walkerより抜粋

 

監督は、『リーサル・ウェポン』シリーズ、『マッドマックス』シリーズで俳優として活躍し、自身が監督・主演等を務めた『ブレイブハート』で第68回アカデミー賞最多5部門で受賞を果たした経験のあるメル・ギブソンです。

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↑微笑みのメルさん

 

監督としても俳優としても華々しい功績を残してきた彼ですが、最近は色々と問題を起こしておりまして…。

元恋人へのDV容疑や、人種差別的発言をしてしまったりが原因で、しばらく表舞台からは遠ざかっておりました。

シルヴェスター・スタローンの計らいで悪役で出たりしている映画はありました。)

そして今回、、、。実に約10年ぶりの監督作である今作で、彼はアカデミー賞6部門ノミネート、2部門を受賞するという形で復活を遂げます。

彼がしたことは決して許されることではありません。

しかし、過去に罪を犯しても再び映画監督として表舞台に立つことを許されたのは、彼の反省やその後の行動が周囲の人々の気持ちを動かしたからではないかと思います。

これからは過去の行いを二度と繰り返さず、更に良い映画を作っていってほしいですね。

 

そんなメル・ギブソンの10年ぶりの監督作復帰作で、今作の主人公デズモンド・ドス役を演じたのはアンドリュー・ガーフィールドという役者さんです。

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↑凛々しき表情のアンドリュー

 

2010年に公開された映画『ソーシャル・ネットワーク』でマーク・ザッカーバーグの友人であり、フェイスブックを共に立ち上げたエドゥアルド・サベリン役を演じて注目され、その後は昨年アカデミー賞文学賞を受賞したカズオ・イシグロ原作の『わたしを離さないで』や、『アメイジングスパイダーマン』などの超大作まで主演する実力派俳優さんです。

アメイジングスパイダーマン』で、ピーター・パーカー/スパイダーマン を演じた際、ファン達から「眉毛が太すぎないか?」と言われて「眉毛の太さが関係あるかい!これは俺のアイデンティティじゃい!(意訳)」と語った話や、一般人を装ってコミコンに参加し、客席からいきなり登場してファンを喜ばせたりするなど、とっても茶目っ気のある人でもあります。僕も彼の大ファンです。(笑)

↑その時の実際の動画です。みんな大興奮!

 

 

…とまあそんなこんなでここから先がネタバレありの批評(レビュー)です!

 

 

【批評(レビュー)】

 

映画全篇を通して、デズモンド・ドス1人にフォーカスした物語を描くことで、戦争映画よりも、伝記映画的側面の強い作品であると僕は感じました。

 

映画の冒頭はハクソー・リッジでの戦い、そしてデズモンド・ドスが担架で仲間に運び出されるシーンから始まります。担架の上でデズモンドが気絶したような描写の後、場面はデズモンド・ドスと彼の兄弟であるハロルド・ドスか仲良く遊んでいる幼少期の映像に切り替わります。

初めは2人が仲良く山の中で追いかけっこしたり、崖の上に登ったりして遊ぶ微笑ましいシーンが続きます。しかし、父親が戦死した仲間の墓を見舞うシーンが挿入されたかと思えば、次のシーンになると2人は自宅の庭で殴る蹴る首を絞めるの大喧嘩を始めているんです。さっきまでは仲良く遊んでたのに、本当に突然喧嘩の場面に切り替わります。

しかもそれを見ている父親も「右のガードが甘いぞ」とか、「喧嘩に勝った方を俺が殴れば平等だ」とか言っていてなんだか決して“善き父”とは言えないイメージ。

喧嘩はエスカレートし、最終的にデズモンドがハロルドの頭を落ちていたガレキで殴りつけて終わるのですがこれには父親も大慌て。

急いでハロルドを抱き抱えて家に入れるわけですが、デズモンドは自分のしでかした事に茫然自失。

虚ろな状態で家に入ったデズモンドは、壁に立てかけてある絵の中の“汝、殺すことなかれ。”の文字を見つめ、母に「殺人は最悪の罪よ。」と諭され一連のシーンは終わります。

 

この冒頭10分ほどで

「デズモンドの父親は過去の戦争で荒れてしまっているけど、息子や家族を本当は大切に思っている」ことや

「この事件からデズモンドは暴力、ましてや殺人など絶対にしないという“信念”を持つことになった」こと等の映画の根幹部分を描写できていたことは素晴らしいと思いました。ここで僕も一気に映画に没入できました。

 

少年期はここで終わり、次からはデズモンド青年期です。

ここでは後に結婚する事になるテリーサ・パーマー演じるドロシーとの出会い、ハロルドの入隊、そして自身の衛生兵としての入隊の決意など、これから始まるハクソー・リッジでの戦闘前最後の日常が描かれます。

日常ではドロシーに対してちょっとサイコパス気味な行動を見せたりするデズモンド。正直私がドロシーだったら間違いなく彼を恋人、ましてや夫にはしません。そのくらい初対面の人にはしないであろう奇行と雰囲気で観客を和ませてくれます。(笑)

ここでしっかりとデズモンドの平和な生活を描く事で、後から訪れる戦争パートの悲壮さをより強調する結果になっていました。

 

入隊後は『フルメタル・ジャケット』よろしくな厳しい訓練シーンや“武器を持たない”と宣言して行動するデズモンドに対する上司、同じ隊の仲間からイジメ、軍法会議にかけられる様子などが描写されます。このパートでデズモンドの信念の強さの再確認、そして周囲の人間のデズモンドへの評価の変化を見ることができるのですが、描写自体は戦争、伝記映画でよくある描写なので割愛を、、、。(笑)

 

そして、いよいよ映画は“ハクソー・リッジ”での戦争パートに入ります。

今作の上映時間は139分間あるのですがこの上映時間のうち60分ほどは全て“ハクソー・リッジ”での戦闘シーンです。

戦争映画での凄惨な映像と言われると、真っ先に思い浮かぶのが『プライベート・ライアン』のノルマンディー上陸作戦だという人も多いでしょう。今作の映像はそれに勝るとも劣らないものになっています。

爆撃、銃撃、火炎放射器、手榴弾。ありとあらゆる銃火器を兵士は使います。腕がちぎれ、内臓は飛び出し、生きたまま燃やされる兵士達の様子がまるで自分も戦場にいるような臨場感で映し出されます。果敢に戦う者、怯えてその場に止まる者、敵とともに自爆する者。苦手な人は目を背けたくなるようなリアルな戦場と、そこで必死に己の信念を果たさんとするデズモンドの姿に感情を揺さぶられました。

特に、あまりに凄惨な戦場の現実に自分を見失いそうになったデズモンドが「主よ 声をお聞かせください」と神に問いかけ、助けを求める兵士の声が耳に入る。

その声を聞き“衛生兵として1人でも多くの命を救う”これが自分の成すべきことだ。と決意を新たにする場面は、その後の怒涛の救出劇も含めてとても印象に残ったシーンでございました。

 

冒頭の少年期から後半の戦争パートに至るまでデズモンド・ドスという1人の男の物語を一貫して描き、戦争シーンも妥協なく兵士の息遣いが聞こえてきそうな臨場感に仕上げている、戦争と伝記、2つの要素が見事に混ざり合った映画でした!

 

 

【でも、不満点も…】

ここまで良い点ばかり述べてきましたが、不満点ももちろんございます。

まず1つ目は、冒頭のハクソー・リッジでの戦闘シーンでデズモンドを映すべきではなかったのでは?というもの。

というのも、それを映したせいで、後半のデズモンドによる救出シーンで彼が命を失いかけるような展開にはならないと分かってしまうからです。少し緊張感が削がれるなと思ってしまいました。

2つ目は、救出シーンが冗長すぎるという点です。

ん?さっき救出劇感動したいうてたやないか!と言われそうですが、良いシーンと悪いシーンは紙一重と言いますか…。

良いシーンなんだけれども、長すぎるあまりに途中から“なんで下の仲間に助けを求めなかったの?”、“崖の下の兵士はなぜ上に登って手助けをしようとしなかったの?”という疑問が湧いてきてしまうのです。何人かで協力すればもっと命を救えるはずなのに、これではデズモンドの独りよがりで敢えて1人で救出を行なっているんじゃ、、、?みたいな。

少しでも崖の下の兵士が“上はどうなっているかわからない、行くのは危険だ”と話してる場面でも入れてくれればもっと素直に救出劇を見れていたかなと思います。

 

、、、と、こんな感じで少し不満な点もありましたが、概ね2時間超えという長い上映時間ながら退屈せずに鑑賞できた映画でございました!

 

皆さんも是非お時間がありましたらご鑑賞ください!沖縄を戦場に戦った映画なので、決して私たちに無関係な話ではありません。戦争について考えさせてくれるキッカケにもなるかと思いますので!

 

ガクシコ評価100点満点中75点な映画でございました!